シトロエン
C4 ピカソ
型式:ABA-B785G01
1598cc 6AT
全長x幅x高 4440x1825x1630mm
ホイールベース 2780mm
重量 1460kg 前920kg 後540kg
C4ピカソ、5シーターとムルティプラを比較したら何が見えてくるのか。これまたゆるーく掘ってみよう。
大した解釈も進んでいないが、2019年C4ピカソを総括。
まず、他から乗り換えると違和感を感じるブレーキフィール。無造作に踏んだら制動力の急峻な立ち上がりに戸惑う。停止間際も「クッ」となって、やんわりと止まれない。
次の違和感はアクセルだ。普通の感覚で踏んだらなかなかクルマが動き出さない。1cmくらい踏んでようやくゆっくりと動き出す感じだ。電動パーキングブレーキの自動解除のためにストロークを余分に確保しているのだろうか。ある程度踏み込むと、グワッと加速する。ターボ付きなるがゆえのリニアリティのなさは仕方がない。スムーズに走ろうとするとやや神経を使う。
よってもって山道では足首を余分に動かさなければならない。ACCでアクセルワークから解放される時代なのに、このちぐはぐ感はなんだ?と思ってしまう。 エクサやムルティプラなら、アクセルペダルに足を乗せ、遊びをやり過ごしてほんの少し足先に力をかければエンジンが反応する。
元気の走らせようと思ったら、C4ピカソはかなり意図して踏み込む必要がある。踏み込めばするすると加速させるだけのパワーはある。
ノーマルタイヤは、205/55 R17。一本当たりの重量は20 kg。荒れた路面では跳ねがちだ。ちなみにムルティプラは195/60 R15で16.5 kg。
ボディ剛性は高い感じがしない。バタつく足からの振動で揺すられ、ところによってぶるぶるする。
シフトレバーはハンドル右上奥に生えている。これはどちらかと言われればベターな方に振り分けられる。今どきATのシフトレバーなら、ボタンでもスイッチでもなんでもアリだ。操作フィールはやや安っぽい。シフトアップダウンのパドルが付いているから文句はない。
真ん丸でないハンドルはそれほど気にならない。どっちかというとSUVだが、回頭性はそこそこ俊敏で、ハンドリングは楽しめる部類。
結局のところ、運転させられている感がぬぐえない。いまだ借りてきて乗っているような気がしてしまう。手荒に扱うのがはばかられ、腫れものに触る感じだ。
シトロエンとはそういうクルマなのか。
2019-12
貧弱なリアシートとは打って変わって、C4ピカソのフロントには掛け心地のいいシートが備わる。
意匠的にも凝っている。2トーンに張り分けられた非対称形状(車体中心に対しては対称)だ。ただしなんのありがたみもないが。リアシートにも同じように反復したらよかった。(オプションのレザータイプは、両サイドのシートのダークカラー部分の縞模様が非対称。)
フロントシートの寸法、座面幅 / 座面長さは、
C4ピカソ: 525 mm / 480 mm
ムルティプラ: 480 mm / 485 mm
さすがにC4ピカソのシート幅はムルに対し余裕があるが、座面長さは差がなかった。ムルのシート幅は全席(6座)とも同じである。その座面はすべて同じで、横方向のサポート性は期待できない。尻の位置が決まりにくいので、運転席だけはもう少し起伏があってもよかった。
ちなみに、エクサのフロントシートの座面幅は540 mm、座面長さは510 mmと大きめである。このシートについては、エクサ-2で詳解する。
C4ピカソはフロントとリアのシート格差がはなはだしい。その差たるや商用車のレベルだ(言い過ぎか?)。
だったらエクサは何なんだということになるが、エクサのリアシートは荷物置きなので格差云々の問題は生じない。
ムルティプラは、フロント・リアすべての席の座り心地がほぼ平等である。あるのは各々の配置による微妙な差であるが、それについてはムルティプラのページで詳解しよう。
2019-11
C4ピカソのリアには、同じ大きさのシートが3つ並んでいる。カタチも同じである。
ムルティプラのリアにも3座同一サイズが並ぶが、両者には小さくない違いがある。
シートの座面幅は、
ムルティプラ: 480 mm
C4ピカソ: 445 mm
他の独立3座のリアシート幅は、メーカー公称値で、
ティーノ(1998): 475 mm(両側)410 mm(中央)
クサラ・ピカソ(1999): 445 mm(3座)
エディックス(2004): 475 mm(両側)420 mm(中央)
トゥーラン(現行): 460 mm(両側)410 mm(中央)
3座とも幅が480 mmのムルティプラが他より大きめ、と言えるだろう。
クルマ以外と比較してみると、
新幹線の3人掛け+2人掛けの座席幅、440 mm(JR東海N700系)。
飛行機の国内線の普通席の幅、約440~450 mm。
すきまを含めたシート中心間距離は分からないが、これらと単純に比較すれば、C4ピカソも言うほど悪くないと思えるが...。
シート間の隙間はムルの20 mmに対してC4ピカソは7.5 mmだから、シートどうしの距離はムルの500 mmに対しC4ピカソは452.5 mmで、50 mm弱の違いがある。
座面長さを見てみる。ムルティプラの座面は後端で段丘上に盛り上がっているので、どこまでを座面として測るか悩ましいが、座面前端からバックレストのもっとも近いところまでの長さとすると、
ムルティプラ: 495~500 mm
C4ピカソ: 445~450 mm
実際に座ってみれば、座面長の差が座り心地に現れていることがすぐにわかる。440 mmでは、膝裏が開いてしまって落ち着かない。子供用に割り切っているのだろうか。座面は前後方向に伸縮できたらよかった。
もう一つ言えば、座面の起伏も問題だ。
C4ピカソのリアシート座面には、U字型の縁取りがあって、端よりも少し内側が盛り上がっているから、寸法以上に小さなシートに座らされている感じがしてしまう。改めてムルティプラのリアシートの座面形状を見ると、これが正しいカタチ、だと納得させられる。
C4ピカソのリアシートのリクライニングは2段階。角度の違いはさほどでもなく、かつ常用は寝かせたほうにほぼ限られる。スライド機構は3座独立して備わる。ダイブダウン機構によって、低く格納できる。でも、そのためにシートが小ぶりになってリクライニング量も限られるなら、ダイブダウンも良し悪しである。
一方、ムルティプラのリアシートは、多段階にリクラインイングし、そこそこ寝かせることができる。シートの床面への取り付け位置を変えることで、中央席は3段階、両サイドは2段階に前後にずらすことができる。微調整は当然効かないが十分だ。1脚ずつダブルフォールディングで跳ね上げて、任意に荷室を拡大でき、さらに3座すべてを取り外せば広大な空間が得られる。
十分に開くとは言えないムルのリアドアから、重いシートを引っ張り出すのは一苦労である。外したシートを置いておく場所も必要だ。それでも何度も付けたり外したりしてきた。車検時に付け忘れると取りに戻らなければならなかったりする。
ムルティプラが登場したころは、3座独立、脱着可能リアシートは全盛だった。ムルティプラの並行輸入車が登場するカーグラフィック470号(2000年5月)には、同様のリアシートを持つクサラ・ピカソ、セニック、エスパスが並ぶ。
コンフォート性と利便性を両立したダイブダウン機構付きリアシートは、今なら数多くあるだろう。C4ピカソのそれはいずれも中途半端であるのが残念なところだ。 ダメ押しを言えば、その見た目もいまいちなのである。
C4ピカソのリアシートの特に中央席は、目の前に遮るものがなく頭上には広大なグラスルーフが広がって、視覚的には抜群なのだが、座っていてなんだか荷物になったような気がしてくる。おもてなし度がちぐはぐなのだ。
リアシートに座るなら、ムルティプラを選ぶ。そう言い切ったところで何がどうなるわけでもないが。
2019-11
C4ピカソの5シーターとムルティプラの寸法を並べてみる。
C4ピカソ / ムルティプラ
全長(mm)4440 / 4005
全幅(mm)1825 / 1875
全高(mm)1630 / 1670
ホイールベース(mm) 2780 / 2665
トレッド(mm)1575-1585 / 1510
重量(kg)1460 / 1380
重量 前-後(kg) 920-540 / 840-540
C4ピカソはムルティプラに対して、435 mm長く、50 mm狭く、40 mm低い。ホイールベースはC4ピカソが115 mm長い。細かく見ると、フロントオーバーハングは119 mm、リアオーバーハングは201 mm長い。全長に対するホイールベースの比率は、ムルが66.5%、C4ピカソは62.6%である。
排気量は同じだが、シャシーはワンサイズ上、車格もC4ピカソが上だ。
全幅だけは特異的に大きいムルだが、トレッドはC4ピカソより65~75 mmも狭い。
重量については、C4ピカソ(ガソリンエンジン)が、前輪荷重で80㎏重く、後輪荷重は同じ。ちなみにC4ピカソのディーゼルエンジンはさらに130 kg重い。
これ以降、C4ピカソとムルティプラのさらなる比較を進めていくことにしよう。
2019-05
横に広いムルティプラ、縦に長いC4ピカソ。フロントガラスのことである。
寸法の違いがどれほどあるのかこれも測ってみよう。
C4ピカソ / ムルティプラ
上端-下端:1170-1425 / 1460-1520 mm
中央高さ-両端高さ:1460-1220 / 900-835 mm
実際はもうちょっと寸法を測って、あれこれと計算して面積を求めると、
C4ピカソが1.78 平方m、ムルティプラが 1.29 平方mとなった。
C4ピカソが1.38倍大きいということになる。
C4ピカソのフロントウィンドウはドライバー頭上手前まで伸びていることが特徴だが、ここまで開けていると、自分が前方にせり出したような錯覚にとらわれる。
フロントウィンドウ下端のラウンドは小さく、やや色気に欠ける。
フロントウィンドウとフロントドアの間の三角形のエクストラウィンドウはパノラマビューに寄与しているわけだが、平滑度がいまいちで透過像がうねるのがマイナスだ。
2019-06
このエクストラウィンドウは内側から見れば三角形だが、外側から見るとやや台形である。先代のピカソはAピラーがルーフラインにスムーズにつながっていたが、この現行型はルーフラインに合体する部分でAピラーの厚みが変わったように見えて、どうもすっきりしない。この違和感の根源は何なのか。
現行5人乗りピカソの窓枠のメッキモールはCの字をかたどっていて、リアピラーからフロントドア前側ピラーまで伸びている。下側はドアミラーで隠れてその先端形状が判然としないうえ、ベルトラインはここでキックアップして、段違いとなってAピラー根元につながっている。ちょっとわかりにくいカタチだ。
先代C4ピカソもそうであるが、現行の7人乗りのこのラインは、ドアミラー根元をまっすぐにやり過ごし半分ほど行ってからAピラー根元に向かって上昇していて、スムーズでわかりやすい形状になっている。一方で現行の5人乗りはそれとはカタチを変えている。
このフロント側の段差はリア側にも対称的に反復されている。ベルトラインをドア部分で一段下げているというわけだ。
さらには、メッキモールの上側はルーフラインに食い込むカタチになっているから、上下も対称になっていることに気付く。Cの字型のメッキモールとドアミラーに惑わされ認識しにくいが、ルーフラインとベルトラインの間に上下方向に食い込むようにロの字型に閉じたフレームが型取られているのである。
エクストラウィンドウが台形で、Aピラーがルーフにつながる部分に違和感があったのは、このデザインモチーフのせいだった。
7人乗りのAピラーから伸びるルーフレール風の処理は、前後に長いグリーンハウスを際立たせ、5人乗りではメッキモールによって段違いをつくり、ベルトラインが長く見えないようにしている。ともに格別にスマートとは言いがたいし、ここまでして5人乗りと7人乗りを差別化する必要があったのかと思ってしまう。他とは違って見えるという点ではありだと思うが。
2019-06