東京 モーターショー2019に出展された「TOYOTA e-Trans」
https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/30070346.html
ムルティプラの逆スラント2段グリルスタイルがここにあった。
このクルマの寸法は知らないが、シエンタよりも幅広で、その上のミニバンに近いサイズか?
フロントスクリーンはドライバーの頭ちょっと前方くらいまで伸びていて、内側にはサブAピラーがあるから、まるでC4ピカソ(スペースツアラー)のようだ。
シートはロングスライドで任意の位置に固定できるようだ。前席横3列は厳しそうだが、リアに3列目を追加でるだろうから定員7人はいけそうだ。
運転席は車体中心に近いところにあるが、EVなのだからもっとフロント寄りに配置して、2段グリルを前進させてもよさそうだ。フロントセクションのボリュームはガソリン車であるムルと変わらないように見える。これならガソリン車もしくはHVで早々に世に出してほしい。
次期シエンタかノアあたりがこんなスタイルで登場したら面白い。習作で終わらせないで。
2020‐08
楽しみにしていたMazda3の1月の販売台数だが、対12月47%も落ち込んだ。CX-30に流れているのだろうか? 釈然としないが、Mazda3 が伸び悩んでいるのは間違いない。
ついでに、マツダの主要車種のこの1年の販売台数を並べてみた。CX-3とCX-8が途中途切れているのは、30位圏外になっていることを示す。CX-3 はCX-30に置き換わっている最中と推測される。
上記銘柄合計を見ると、昨年1月が11,000台強、今年の1月は、CX-3のデータが欠けているが約11,000台で、新型の投入があった分の上積みが叶っていない。
Mazda3は、このままではアクセラのモデル末期レベルに落ち込んでしまうのではないかと心配になる。
1月の1位を奪取したのはトヨタのライズが10,220台で、ダイハツのロッキーも含めれば13,373台であった。
2017年のショーカーであるDNトレックからの量販車であるが、オリジナルにあった物欲を刺激するカタチは失われた。
ウィンドウグラフィックは面影を残すが、オリジナルボディのつるんとした面にはちぐはぐに凹凸が付けられ、前後バンパーの加飾は演出過多になった。DNトレックのテイストを意図して否定したとしか考えられない。
「DNトレックの高質デザインを最下級クラスに持ってこられると、その上のクラスの立場が揺らぐ」とトヨタのデザイン責任者が判断してそうしたのなら、それはそれで正しいと言える。
DNトレックのデザインが社内か社外かは知らないが、担当者はこれに費やした時間を返せと言った方がいい。
それに、フロントグリルはライズのほうがまだしもDNトレックを踏襲しているし、ダイハツにふさわしいカタチに思える。ロ―キーのそれは唐突でどこのなんだかわからないし、キャストなどのほうがよっぽどデザインの質感が高い。
フロントエンドは、ふたつ造ったうちのいい方を取られちゃったのだろう。
まあ、もし逆だったとしても、ライズ:ロッキー = 3:1 のセールス台数比は変わらないだろうが。
2020-02
消費税増税後の10月の販売台数は、新型投入のカローラを除けば、各車相当落ち込んだ。
その中でも気になるのが、2019年5月にアクセラから名前が変わった新型Mazda3である。9月までは順調に伸びていたが、10月には75%も落ち込んだ。ノートも60%落ち込んでいるがそれ以上である。11月の低調ぶりも気になる。が、前年同月比は+98%だから悪くないとも言える。
12月5日発売のスカイアクティブX搭載車の上乗せがどうなるか気になっていたが、12月は他社が落ち込む中増加に転じた。それでも十分とは言い難いだろう。1月も楽しみだ。
一方で、プリウスとノートとアクアの順位争いには、もはや興味がなくなってしまったのであった。
ところで、Mazda3については、街でそれほど見かけないのは気のせいだろうか。遭遇していても気付いていないのか。世の中にはトヨタと軽自動車があふれているから遭遇確率は当然低いと言えるが、それでも注目の新型である。気付かないはずはないが...。
量産型のMazda3では、魁 CONCEPT(カイコンセプト)のシャープでクールなフロント部分は完全には再現されなかった。
当たったら痛そうな鼻先や、奥まった位置にあるヘッドライト、大きなホイールアーチは、量産に際しアレンジされ、フロントは大きくイメージが変わってしまった。ほとんど同じに見えるサイドウィンドウグラフィックスも、コンセプトのほうが遥かにカッコいい。
特徴的なリアピラーまわりも、よく見るとバランスが変わっている。コンセプトでは、リアタイヤ中心の前後にリアドアの後端を含めた太いピラーのボリュームがほぼ均等に振り分けられているのに対し、量産では明らかに前側のマスが小さい。
このリアピラーのボリュームのバランスは、例えるなら同じ猫でも、獲物を狙っているときの前のめりの態勢と、こじんまりと日向ぼっこをしているときの姿勢くらいの違いがある。もちろん魁 CONCEPTが前者である。
Mazda3 / 魁 CONCEPT
全長:4460 / 4420 mm
全幅:1795 / 1855 mm
全高:1440 / 1375 mm
ホイールベース:2725 / 2750 mm
タイヤ:215/45R18 / 245/35 R20
コンセプトは、40 mm短く、60 mm広く、65 mm低い。ホイールベースは+25 mm。
寸法が違うから、各所のバランスも違う。全幅はMazda 6を超える。
魁 CONCEPTができすぎだったということもできるが、であればコンセプトカーの意味は何なのか。妥協の産物を見せられることになった消費者の立場はどうなる?
U字型に切られたグラスルーフは諦めるとして、コンセプトの佇まいが忠実に反映されていたなら、買う気がなくてもショールームに足を運んでいたと思うが、残念ながらそこまでには至らなかった。
最も残念なのは、魁
CONCEPTのこのカッコよさは、永遠に量産車には反映されないということだ。Mazda3の次期型には違うデザインテーマが必要になるから。もったいない。
2020-01
ようやくオーバーハングネタから脱して、ふと気付けば、8月・9月の乗用車ブランド通称名別順位に変化が起きていた。
今年の前半は5~8位を前後していたシエンタが、7月に3位となり、8月・9月に1位となった。
なぜここへきてシエンタが浮上したのだろうか?
シエンタのライバルであるフリードの販売台数を見ると、8月の落ち込みは少なく9月の大きな挽回も特になかった。10月のマイナーチェンジ前で現行の生産量は抑えられたのだろうか。それに対して、シエンタの生産が消費税増税前の駆け込み需要に対応できたために販売台数を伸ばしたと考えることもできる。
e-powerで息を吹き返したノートのせいで、必要もないのに毎月の販売順位が気になるようになってしまったが、この先はセダンとツーリングが追加された新生カローラの動向が気になってくるし、このネタももう少し続くかもしれない。
シエンタのカタチに触れておこう。
デビュー当時は新鮮な部分もあったが、何やら小技ばかりで、カタチの良さは伝わってこない。フロントフェイスは愛嬌もなければ強面でもない。
フロントドアから前はまだしもだが、リアドア後半以降は違うクルマの部品を張り合わせたかのようだ。それは意図されたものなのだろうが、それにしてもデザイン要素が渋滞している。
リアドア後端でベルトラインが下降し、リアクォーターガラスの下端が不連続に始まるところがこのクルマのデザインのハイライトだ。そこまでは良かった。問題はそれ以降、後半の処理である。
リアピラーが細いのは後方視認性の点で悪くないが、デザイン上のバランスはイマイチだ。リアクォーターガラスを唐突にキックアップさせたことでリアセクションだけが妙に腰高になったことに加え、ピラーも細く垂直であるため、とにかくカッコがよろしくない。
いっそのことリアのサイドパネルをブラックアウトするとか、ツートーンにすれば、斬新なスタイルになった。スズキのクルマにはそういったセンスが光るものが見られるが、今のトヨタのツートーンカラーは,カムリ、カローラスポーツ、ヤリスなど見るに堪えない。塗り分けを考慮していないところに無理やり境界を設けているからだろう。巷で見ることがないのが救いだ。
部分的に切り取って見た場合でも様になるようなデザインができないものか?と思ってしまう。
2019-10
前項からの続き。フロントオーバーハングが1mを越え、かつフロントオーバーハング ÷ ホイールベースが40 %を超えるクルマをピックアップし、その値の順に並べてみた。
思いついた限りであるので網羅性はないし、それらしいデータが得られたものだけだから脈絡もない。市販されていないものも含む。表中の * 印の付いたものは、側面図から測ってオーバーハングを推算したものである。
車名 |
年式 |
フロントオーバーハング (mm) |
フロントオーバーハング / ホイールベース比(%) |
ホイールベース中心 オフセット / ホイールベース(%) |
Subaru ALCYONE * | 1985 | 1000 | 40.6 | 0.3 |
Ferrari F50 * | 1995 | 1052 | 40.7 | 3.9 |
Mercedes-Benz C111 | 1969 | 1070 | 40.8 | 6.1 |
Saab 900 | 1992 | 1032 | 41.0 | -2.0 |
Ferrari F40 | 1987 | 1048 | 42.8 | 3.8 |
Ferrari F512 M | 1994 | 1095 | 42.9 | 5.1 |
Ferrari 328GTS | 1985 | 1020 | 43.4 | 2.9 |
Ferrari 550 Maranello | 1996 | 1085 | 43.6 | 2.2 |
Ferrari Mythos * | 1989 | 1139 | 44.7 | 9.6 |
LaFerrari * | 2017 | 1207 | 45.5 | 6.8 |
Chevrolet Corvette C3 | 1968 | 1130 | 46.7 | 0.5 |
Enzo Ferrari | 2004 | 1252 | 47.2 | 8.5 |
Pontiac Firebird Trans-Am * | 1996 | 1265 | 49.3 | 2.0 |
最右列にある「ホイールベース中心オフセット」とは、車体全長の中心に対するホイールベース中心のずれ量を表す。この値がプラスで大きいほどホイールベースの中心はリア側にずれていることになる。この値をホイールベースと対比(%)することで、車体の大きさに関係なく、ホイールベース基準でどれだけフロントオーバーハングがアンバランスに大きいかを測ることができる。この値が3.5
%を越えたらアンバランスの仲間入りと言ってしまおう。
フロントオーバーハングの絶対値が大きいのはFirebird Trans-Amだが、リアオーバーハングも長いのでオフセット2.0 %と大きくない。トランザムに次いでフロントオーバーハングが長いエンツォのほうがオフセット量は8.5 %で、いい感じでアンバランスだ。
次に、アンバランスをもっとわかりやすくするため、オーバーハングがリアよりフロントのほうが大きいクルマ(フロント / リアの比が1.25以上)を順に並べてみる。ホイールベース中心オフセット量は絶対値を表示した。もちろんフロントオーバーハングはいずれも1 m以上だ。
車名 |
年式 | フロントオーバーハング (mm) |
オーバーハング フロント/リア比 |
ホイールベース中心 オフセット量(mm) |
Lancia Delta | 2008 | 1017 | 1.27 | 107.0 |
Citroen C6 | 2005 | 1125 | 1.27 | 120.0 |
Ferrari F512 M | 1994 | 1095 |
1.31 |
130.0 |
McLaren MP4-12C | 2011 | 1056 | 1.35 | 136.5 |
Citroen CX | 1974 | 1057 | 1.38 | 147.0 |
Citroen DS |
1967 |
1016 | 1.39 | 141.5 |
Mercedes-Benz C111 |
1969 |
1070 | 1.43 | 160.0 |
LaFerrari * | 2017 | 1207 | 1.43 | 180.8 |
Enzo Ferrari |
2004 |
1252 |
1.57 | 226.0 |
Ferrari Mythos * |
1989 |
1139 |
1.76 | 245.9 |
フロントオーバーハングがアンバランスに大きいのは、フェラーリ・ミトスで、エンツォを凌ぐ。
そもそもインプレッサのフロントオーバーハングの違和感から始まったこのコラムであるが、非現実的なクルマの比較になってしまった。
ミッドシップでもなく旧車でもないレベルで、ホイールベース中心オフセット / ホイールベース(%)がアンバランスなクルマは、手元で調べた中ではイタリア車が上位に並ぶ結果となった。
Fiat Multipla(1998):3.6 %
Lancia Delta(2008):4.0 %
Coupe Fiat(1993) :4.4 %
Fiat Bravo(1995) :4.4~4.7 %
ちなみにインプレッサ5ドアの数字は2.4 %で、マツダ3は1.7 %であるから、それよりはちょっとアンバランス寄りであるが言うほどでもない。
ムルティプラのフロントオーバーハングは765 mmしかないから、上記表には登場しなかったが、リア側が575 mmと短いため、オーバーハングのフロント/リア比は1.33で、ホイールベース中心オフセット / ホイールベース(%)も3.6 %となってアンバランスグループの仲間入りである。
国産でフロントオーバーハングが長いのは、Honda Clarity PHEV:1067 mm(推算)
ただしこいつはリアも長いので、ホイールベース中心オフセット比はマイナス0.6 %である。
アメ車のセダンなどはフロントオーバーハングが長大だが、ホイールベースで割った値はさほどでもない。ファイアバード・トランザム(1996)はフロントオーバーハングがホイールベースのほぼ半分に近い。これを超えるには、「この値を超える」という強い意思が作り手に必要だ。その崇高な意思を後押しする必然性は、今の工業製品としてのクルマには(多分)あり得ないのが残念ではある。
2019-09
前項からの続き。フロントオーバーハングとホイールベースの比(=フロントオーバーハング ÷ ホイールベース)が0.4を超えるのは、1985年登場のアルシオーネである。
当時のカタログにはオーバーハングの数字がないので、PCのモニター上の側面図を定規で測って約1000 mmと算出。ホイールベースは2465 mmだからその比は0.41に近い数字となる。リアオーバーハングも985
mmと長い。ホイールベースと全長の比は0.55。特異なプロポーションだ。特異だが悪くない。というか「ワル」くない。クリーンすぎるのである。まじめにカッコよさを求めた結果のカタチだが、もうちょっとワルいところがあってもよかった。例えば、超ショートデッキにしてランチア・ストラトス風にするとか、ルーフを低くしリアエンドまで伸ばして2ドアのステーションワゴンにするとか。
ホイールベースと全長の比は、length:wheelbase ratioというのが一般的なのかもしれないが、上記はその逆数である。ちなみにムルティプラのホイールベースと全長の比は0.67、アイはダントツの0.75である。
アルシオーネに迫る鼻っ面の長さを持つクルマはピアッツァ(1981~1991年)で、フロントオーバーハングとホイールベースの比は0.4、ホイールベースと全長の比は0.57である。オリジナルのショーカー(アッソ・デ・フィオーリ)から伸ばされた鼻先は長すぎる感じはあるが、このアンバランス感が魅力なのだ。ちょっとワルくなった感じだ。斜め前方からは迫力のある絵が撮れる(撮ったことはないが)。
ちなみに、アッソ・デ・フィオーリとピアッツァの寸法諸元(mm)は、
全長 :4195 / 4310(アッソ・デ・フィオーリ / ピアッツァ)
全幅 :1620 / 1655
全高 :1278 / 1300
ホイールベース:2405 / 2440
フロントオーバーハング:895 / 910
リアオーバーハング:895 / 895
リアオーバーハングの変更は御大からお許しが出なかった(注1)とのことだから、伸ばされた全長はホイールベースに35 mm、フロントオーバーハングに80 mm割り当てられたことになる。フロントウィンドウの角度は4度起こされているから、エンジンフードは全長の拡大(115
mm)以上に伸ばされたのではないか。オリジナルのイメージイラストでは、ちょっとずんぐりしたコンパクトなスポーツワゴンが意図されているが、そこからずいぶんとプロポーションが変化したことになる。
上記にはひとつ推測がある。ピアッツァのオーバーハングはカタログに記載があるのだが、このころのオーバーハングにはバンパー部分の寸法は含まれていない。したがって、フロントとリアのオーバーハングとホイールベースを足しても全長に足りないということになる。ピアッツァの場合、バンパーに取って付けたように見える黒のモール部分の厚さがオーバーハングとして含まれていない。よってこの部分の厚さが前後同じであると仮定して上記オーバーハングを推算している。
注1):自動車ユニーク・メカの秘密(たてうち ただし著)から。この中で、「全高で25 mm大きくなった」とあるが、上記寸法諸元では23 mmである。この2mmの違いについては...、なんともわからない。
ここまで来ると、フロントオーバーハング 1000 mm超えのクルマが気になってくる。というわけでオーバーハングネタはまだ続く。
2019-08
https://www.subaru.jp/impreza/impreza/design/exterior.html (写真は左右を反転)
現行インプレッサ5ドアのサイドビュー。
内蔵物の都合があるにしてもこのフロントオーバーハングは異様に長く見える。少し離れたところから撮っているから余計にそう見えるということもある(写真上)。メーカーのWEBサイトのそれ(写真下)は、至近距離からのローアングルで、タイヤは大きく、ルーフとエンジンフードは薄く見えるように腐心している。しかし普通はこのアングルからクルマを眺めることはない。地面に這いつくばるか、丘や土手の上において少し下の草むらから見る恰好になる。
実際のオーバーハングは何mmなのか? カタログを見たが記載がない。ちょっと面倒と思いつつUKのサイトで調べると、960 mmとあった。比較対象としてとりあえずプリウス50系を見てみると、HVが950 mmで、PHVは+25 mmの975
mm。これだとインプレッサが特異的に長いという話にならないので、VW ゴルフを引っ張り出してきて見てみると、855 mmで100 mmちょっと短い。これを標準ということにしよう。
国産車のカタログにはオーバーハングの記載がないのが通例のようだ。
1986年登場のエクサのカタログにはオーバーハングの数字はないが、その先代のパルサーエクサのカタログにはあるから、30年前ぐらいまでは記載があったようだ。測定起点の不明な室内長などよりも、フロントとリアのオーバーハングを示してほしい。
フロントオーバーハングとホイールベースの比(=フロントオーバーハング ÷ ホイールベース)で比較すると、
インプレッサ5ドア:0.36
プリウスHV:0.35
プリウスPHV:0.36
ゴルフ:0.32
ちなみに、ムルティプラは0.29で標準よりは小さく、三菱アイに至っては0.16とダントツに小さい。
プリウスの長めのフロントオーバーハングがアンバランスに見えないのは、フロントウィンドウが前進しエンジンフードが短いスタイルであることによる。エンジンフード上には三日月状の凹面があってさらに短く見える。フロントバンパー両サイドの加飾も効いている。
インプレッサは、オーソドックスなキャビン形状に長めのエンジンフード、さらに厚めのフロントエンドがプロポーションのアンバランスを助長している。しかし、この程度のアンバランスは中途半端で面白みがない。ぼーっとながめている限りは、現代風のデザインワークによって紛れてしまって気が付かないレベルである。
先祖を辿ってみると、初代レオーネ(1971-1979年)のフロントオーバーハングとホイールベースの比は0.33である。数字的にはさほどでもないが、均整の取れたプロポーションとは言い難いスタイルだった。内蔵物に対しちょっと盛ってデザインしたらアンバランスが際立ってしまったという感じだ。しかしここまで行くと味わい深いとも言える。レオーネは2代目になっても垢抜けず、洗練されたスタイルで登場した初代ミラージュ(1978年~)と同時期の量販車であるということがにわかには信じがたい。
フロントオーバーハングとホイールベースの比が0.4を超えるクルマはあるのだが、そこでもスバルは期待を裏切らないのである。今回は国産車のオーバーハングを調べるのに予想外に時間を費やしてしまったので、それについては次回にしよう。
2019-07
2006年7月の写真。
左は、先代のファミリア(全幅:1695 mm、トレッド:1470 mm)からめでたく3ナンバー化をはたした初代アクセラ。誕生は2003年でムルの国内導入時期と重なる。
全幅は、アクセラの1745 mmに対し、ムルティプラは+130 mmの1875 mm。トレッドは当然ムルのほうが大きいと思いきや、アクセラのフロント/リア:1530/1515
mmに対し、ムルはフロント、リアともに1510 mmで、12.5 mmほど小さいのである。
最近のクルマのトレッドを見てみると、プリウスが1530/1540(前/後)mm、アクアが1465/1460 mm。1510 mmというのは5ナンバーと3ナンバーの境界線上にあって中途半端なサイズのようだ。探してみて最も近かったのがスイフトスポーツの1510/1515
mmだ。(同じプリウスでも215サイズの幅広タイヤを履くグレードでは1520/1510 mmとなり、これも近いが...。)
スイフトのベース車のトレッドは1490/1495 mm、全幅は1695 mmで5ナンバー枠いっぱい、スイフトスポーツの全幅は1735 mmで5ナンバー枠を少しはみ出す。ベース車のトレッド拡大版という特殊な成り立ちなるが故の数字なのである。
さらに近いクルマをもう一つ。最近ついに3ナンバーの仲間入りをはたしたフォルクスワーゲン・ポロのトレッドは1525/1505 mm。全幅は1750 mmだ。全長は4060 mmでムルを越える。
全幅がでかいからロールが少なくワインディングも得意、というイメージがあるムルだが、トレッドを見れば、全高に対して決して幅広とは言えない。ただ、床面が高く着座位置も高い割にはロールは小さいような気はする。しかしそれも、高いアイポイントのせいで、横Gを感じるほど振り回す気にならないからなのかもしれない。絶対的な数値を示せるわけでもないから、いい加減なことは言わないことにしよう。
全幅/トレッドを計算すると、ムルティプラは1.24で、とび抜けて異常な値だ。普通は1.5~1.6くらいである。
ムルティプラは、同時期のブラーボ(3ドア)、ブラーバ(5ドア)の足回りを流用しているから、トレッドは同じかと思っていたら、ブラーボ:1471/1430 mm(全幅 1755 mm)、ブラーバ:1439/1441 mm(全幅 1741
mm)と、てんでバラバラだった。違っていいなら、全幅の広いムルはトレッドをもっと大きくすれば、ファニーなスタイリングがスーパーカー級のハッタリ感のあるものになったに違いないと思ってしまう。
まあ、ムルにそんな押し出しの強さは期待しないにしても、あとちょっと、どこかしらをなんとかすれば...、という思いが常に交錯してしまう。
2019-05
現行50系プリウスは2015年12月に登場、1万台を割っていた先代の販売台数を2万台レベルに戻したものの、1年足らずでアクアよりちょっと多いレベルに落ち着いている。ノートは、2016年11月に追加されたe-POWERによって販売台数トップを奪取するが、2017年はメーカーのごたごたで不安定。2018年の総計はノートがトップだったものの、プリウス、アクアとともに似たような傾向で推移している。
この3車種が2018年最も売れた乗用車であり、いずれもパワートレインにモータを組み込んだハイブリッドカーだ。クルマの耐用年数が長くなり乗り換えスパンも延びているから、次は新しい何かがあるものを選びたくなる。現在の日本国内ではそれがハイブリッドカーということになる。
現行ノートのオリジナルは2012年9月にリリースされ、その4年後に追加された新しい駆動システム(e-POWER)によって販売台数のトップに浮上する。自販連の乗用車ブランド通称名別順位において、ノートが何位だったかチェックするのが毎月の楽しみになった、と言っても大げさではない。それほど画期的な出来事だったわけであるが、一方でノートよりも古いアクアがまだ同等に売れていることにも驚く。
日産のe-POWERでEVの世界に片足を突っ込んだユーザーが、pure EVにステップアップしていく流れは容易に想像できる。「いつかはEV」ではなく「次はEV」という国内のEV大衆化の流れは、リーフ自身ではなくe-POWERがつくり出していくのではないだろうか。
現行プリウスの販売台数の漸減の問題点は、2018年時点で、先代のモデル末期と同レベル以下まで落ちたことと、2011年12月リリースのアクアを下回ってしまっていることだろう。本来プリウスが確保するべきユーザーがアクアに流れたとも見える。アクアがプリウスの初期の意思を受け継いだと言えるかもしれない。
2018年12月にマイナーチェンジした現行プリウスであるが、はたして施した手入れが奏功するかどうか、よけなお世話であるが、ノートの販売台数とともに注視していくことにしよう。
2019-03
プリウス50系のマイナーチェンジで最も残念な点は、フロントグリル(Tマークの両サイド)エアインテークの形状がほとんど変わらなかったことだ。これがウーパールーパーの口に見えてしまうのである。ここを変えずして不評だったデザインのイメージチェンジは不可能だと思っていたが、ここだけは変わらなかった。歴代のプリウスが採用してきた意匠だから継承しているのだろうか。他をいくらいじっても、これがあったらそこはもう....、である。
人間の視覚は顔のような形や相手の視線、表情に敏感だから、いったんそう見えてしまったら、これを顔として認識するなと言われてももはや無理である。
睨んだり、にやけた顔に見えるデザインには成熟や機能美を感じにくい。そう言い放った後にフェラーリFFが思い浮かんでしまった(浮かんだのはFFであるが、写真は後継のGTC4Lussoである)。これが幼いデザインだとは口が裂けても言えないが...。
しかしフェラーリには見入ってしまう迫力がある。目つきは似ているが、必然のない凹凸や装飾が施されたプリウスの顔には、眺めていたいと思わせる部分が残念ながら見当たらない。
同じくゴテゴテとはしているがPHVならまだしもだから、そっち方向に寄せる手はあっただろう。差別化のためこの顔の違いはキープしたかったのかもしれないが、わざわざ一方を消化不良のまま残すこともあるまい。いずれにしてもこのマイナーチェンジによって「これなら買おう」とはならない。
メーカーはプリウスをシルバーエイジのためのクルマにしたくないのか、3代目以降は特にウェッジの効いたウエストラインにハイデッキというややアグレッシブなスタイルとしている。高齢者ならずとも扱いにくいだろう。
次のプリウスは、エコ&ヘルシーパッケージをテーマに、全周囲の目視確認を容易にする大きなガラスエリアと低いウエストラインに知的な顔、そしてシンプルなカタチで所有欲を煽ってほしい。
フェラーリ風のロワボディに、ムルティプラ風のキャビン(もちろん全高は低くして)がのったようなカタチ....にはならないものか。低ウエストラン+段丘グリル、乗ったときのワクワク。それがどこかで実現しないかとひそかに願ってしまうのは「変なカタチ好き」の妄想かもしれない。
2019-03
先進的で環境に優しいクルマとして売れたプリウスの販売台数がここへきて漸減している。
今は亡きウィッシュのユーザーが乗り換えを検討したとき、同等の車格とスペースユーティリティを持った新型車が見当たらず、プリウスくらいしか選択肢がなかったというケースもあったと推測される(4WDが必須なら特に)。プリウスを選んだとしても、ちょっと窮屈にはなるが初めてのハイブリッドだし、新しいものに乗ってる感があって満足度は低くないだろう。
問題はこの先である。車両価格はそれなりに高いから、燃費がいいと言っても、走行距離を稼がなければもとが取れないことは明白だし、高燃費をキープしようと思えば急加速も我慢もしなければならない。現在のプリウスユーザーが、燃費計とにらめっこすることが目的になりがちなクルマを今後も乗り継いでくれるだろうか。
プリウスには次の「something new」が必要だ。PHVという選択肢もあるが、これはあくまでハイブリッドの派生であり、かつ中途半端な立ち位置だ。EV走行可能距離を延ばすにはバッテリー容量を拡大する必要があるが、空間は食われるし車両価格も跳ね上がる。仮にPHVが次なる受け皿として普及したとして、EV走行可能距離を延ばせば延ばすほど、ユーザーはエンジンの稼働に嫌悪感や罪悪感を抱くようになり、早晩100%電気自動車を求めるようになる。
この先、HVとPHVだけでは、プリウスのブランドイメージと販売台数の上昇は望めないだろうから、「プリウスEV」を早急に投入して、かつての先進的イメージを取り戻すしかない。もしくは逆にプリウスICE(モーターレス)をラインアップして、HVのありがたみを訴求するという手もある。ついでに言えば、MIRAIも「プリウスFCV」でよかった。
素人が言いたいだけの前置きはさておき、ここではプリウスを引き合いにしてムルティプラについて理解を深めるのが命題である。
プリウス:全長 4575 mm × 全幅 1760 mm × 全高 1470 mm ホイールベース 2700 mm
ムルティプラより570 mm長く、115 mm狭く、200 mm低い。ホイールベースの違いはわずか。
似ているのは重量で、1390(前850、後540)kgは、ムルより前輪側が10kg重いだけである。ちなみにプリウスの前輪側重量は3代目の排気量アップの際に80kgほど増加している。だから何?ついでに、エクサは1110(前720、後390)kgであるから、前後輪重量比65 : 35で、プリウスの61 :
39より前輪相対ヘビーであった。
前後輪重量はクルマ情報WEBマガジンのMotor Days(モーターデイズ)を参照させてもらった。前後輪重量は車検証には記載があるが、カタログには通常記載がなく、クルマの情報サイトにもほとんど掲載されていない。モーターデイズには、試乗に供した特定のグレードについてではあるが、車検証記載の前後重量値が掲載されている。一貫性のある試乗レポートは、多種多様なクルマに対して価値判断の軸を持つことを可能にしてくれる。
https://www.motordays.com/newcar/
実平均燃費は、レギュラーで22 km/l程度のプリウスに対し、ハイオクで11~12 km/lのムル。年間1万キロ乗って6万円ちょっと燃料代に差が出る。しかしムルティプラの場合、経年劣化の部品交換や修理代がしっかりとかさむので、この差はかすんでしまう。
そこをあきらめてしまってはいけないのだが、ムルティプラのユーザーは、燃費がよく維持費のかからないムルがあったら、などとはもはや思わない。プリウスやカローラからどれだけ離れたところにいるか、それが存在理由だと認識しているから。しかし、ムルティプラのコンセプトがEVで復活することは期待しているのである。
2019-03
コンセプトカーまがいのハード&ソフトをまとったEVを市場に投入し、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのテスラ。EVの供給だけにとどまらず、持続可能な社会の確立に向け、エネルギーの調達基盤までも変えようとしている。内燃機関を引きずりながらショーモデルで様子うかがいしている既存メーカーはともすれば周回遅れの様相だ。
というわけで、モデルXである。テスラの5~7人乗りSUV。SUVには似つかわしくない強力な加速性能を持ったEVであり、最先端の運転支援システムがアップデートされ続けるという、something newの塊のようなクルマだ。スタイルに奇をてらったところはなく、ストレートにスタイリッシュだ。EVでなかったとしてもそこそこ売れそうなデザインだ。
全長 5030 × 全幅 2070 × 全高 1680 mm の巨艦。ムルと比較すると、全高はほぼ同じだが、1 mも長く、幅は200
mmほども大きい。ファストバックでありながら3列シートというのも珍しいが、この全長がそれを可能にしている。リアハッチは3列目乗員の頭上前方から開くからややトリッキーな感じもあるが。
ジャガーのEV、i-paceもそうであるが、ガソリン車と比較してエンジンフードを短くできるという利点をいかしたカタチが小気味いい。フロントセクションが長いスタイルはSUVには似つかわしくないし、EVならなおさらだ。
長大なフロントスクリーンや、ファルコンウィングドアにも天窓を設けるなど、パノラミック指向であり、穴蔵感がないのがよい。
2019-02
新顔のムルティプラのスタイルでかろうじて無難に見えるのがこのアングル。視点がもう少し正面に回るとヘッドライトのでっぱりが気になってくる。
ベルトラインはフロントエンドまでなめらかに延ばされ、ここだけ見ればスマートな印象。しかしフロントウィンドウ下端からエンジンフードにつながる丘陵部が分厚くて折り合いがついていない。「ボンネットとフェンダーの稜線生き別れ問題」が発生してしまっている。生き別れの度合いが顕著で、ヘッドライト部がフロントエンドの両端にややつり目状に飛び出たようなカタチになってしまった。
旧顔にあった河岸段丘を裾野状に均(なら)したことで現れたこのエンジンフードの新たな稜線は、Aピラー付け根からフロントグリルとライトの間に向かって伸びていく。この稜線とベルトラインの間に生じる段差は、平面的には絞り込まれながら上下方向には下降しているから単純な面ではない。
この面がどこから見ても破綻なくカッコよく決まっているクルマはそう多くはない。ジャガーやアストンマーチン、ベントレー、アルファロメオなど、長いエンジンフードや象徴的なフロントグリルを持つクルマにのみ許される造形なのである。
フロントグリルに必然性のあるメルセデス・ベンツBクラス(初代、2005年リリース)でさえ同様の問題を回避できているとは言い難いのに、ムル新顔の寸詰まりのフロントセクションに、取って付けたような平坦なグリルの組み合わせは、唐突で必然性がなさすぎる。
少し正面に回ったこの写真からわかるように、ムルティプラの新しいフロントセクションは、フェンダー部に別のクルマのボンネットが乗っているような違和感のあるものになってしまった。旧顔が2段グリルで上下別体になっていたのと同じような、と言うよりも、一見無難に見えるこちらの方が実は痛々しい感じになっているという点は指摘されるべきだろう。
バンパーの上側エッジも唐突な感じで他の部分と質感が合っていない。ナンバープレートの高さ分しか厚さを確保できず、なめらかなRが付けられなかったという感じだ。プレート部分はなんとなくへこみは設けられているが、どうにも納まりが悪い。フロントバンパーのエアインテークもどこかから拝借してきたようだ。新顔のリリースアナウンスの写真を見たときは、CGによる合成写真かと思ってしまった。
さらには、ウィンドウシールド下端とエンジンフードの境(旧顔で最も象徴的でダイナミックな部分)には、デザインワークの放棄すら感じられる。
旧顔からの変更箇所に、デザイナーが施したデザイン上のひらめきのようなものが見当たらないのである。
ムルティプラの卓抜なスタイルを認めた層はもとより、多くのクルマファンをもがっかりさせた要因は、新顔の1ミリも攻めていないデザインワークにあったと言っていいだろう。旧顔の行き過ぎたところをフツーに見えるようにリデザインするというのは、やりたくない仕事だったとは思うが。
リアのコンビネーションランプまわりの面一な処理は👍である。
上記グラフは、ムルティプラのヨーロッパでのセールス台数である。
プロトタイプが公表された1996年当時の目標が年産10万台(ヨーロッパ域内かは不明)だが、それには及ばず。
http://carsalesbase.com/european-car-sales-data/fiat/fiat-multipla/
新顔には2004年にバトンタッチしている。
外観の変更は、旧顔の大幅な販売数の落ち込みは食い止めたが、大きな回復に寄与することはなかったようだ。
2018-09
並んだらとりあえず比較その2。
レクサスNXとムルティプラ。
ムルティプラ : 全長-幅-高 4005-1875-1670 mm ホイールベース 2665 mm
レクサスNX : 全長-幅-高
4630-1845-1645 mm ホイールベース 2660 mm
全長以外はムルティプラが上回る。ムルティプラが寸詰まりということだ。
共通点といえば、ヘッドライトの下にひげがあること。ムルはバンパーのプロテクトモール(もどき)、レクサスはマーカーランプ。このL字の意匠はムルの生き別れハイビームといい勝負だ。このカタチでなくても、もしくはここでなくてもいいという意味で。
NXに関しては、他メーカーは同じことはやらないだろうから、レクサスにしかできないデザインモチーフを続けざるを得なくなったという点で、しばらくは必然だ。ムルティプラの生き別れハイビームは2段グリルとセットだから、必然度はNXよりは高いが、2段グリルの必然度を問われると困ってしまう。
それぞれを消し去ってみたら、”無い”カッコよさも"あり"に見える。
両車に違いがあるとすれば、NXの場合、デザイナーとしては入れたくて入れたわけではなく、ムルティプラの場合は付けたくて付けたという点だろう。推測だが。
2018-07
10年以上前の写真である。イタリアの市街大通りにタクシーが集結している。
ムルティプラの旧顔だけ黒バンパーで、このクルマはホイルキャップもない。もはや体裁も何もない。
フェラーリ社の社用車と言えば聞こえはいいが、タクシーとしても使われている。街の景観にも少なからず影響を与えたことだろう。
それにつけても、他のフィアットと見比べて、同じメーカーのクルマとは到底思えない造作の相異。何とか同じテイストに近づけようと大幅な手入れを施された新顔が旧顔の後ろに覗く。新顔へのチェンジは残念だが、この景観を見れば、新顔デザインへの"GO"サインは責められない。
今現在はタクシーの車種も様変わりしていることだろう。
2018-07
2000年の5月号、カーグラフィック誌にムルティプラが登場する。
正規導入前の左ハンドル、1.9Lのターボディーゼル、リアシートにはヘッドレストがない仕様だ。紺色のボディに無塗装(グレー)のバンパーではあったがサイドビューは都会的に見えた。チョップトルーフがちょっと悪く見えるのと反対に、広大なグラスエリアは知的に見えるというのもあるかもしれない。まあフロントとリアはどう見ても知的には見えなかったが。
昔は変なガイシャが走っていたが、近年はびっくりするレベルはなかった。ムルティプラは久し振りに登場した日常逸脱の「変」なレベルMAXのガイシャだった。これが正規導入されるとはこの時点では思いもしなかった。フィアットオートジャパンがよくぞ正規導入に踏み切ったと言わざるを得ない。
そこに知的好奇心をくすぐるものがあると見たのだろう。「変」だけが売りではリスクが大きい。
ムルティプラの場合、強烈な外観にびっくりした後、好奇心は内部に注がれることになる。乗ってみたらどんな感じかと興味が湧く。幅の広いフロントウィンドウ、縦長のサイドウィンドウから見渡す景色、3列のまんなかのシートの居心地を想像する....。パノラマカーの先頭座席に座ってみたいという感覚に近い。
閉塞感よりは解放感のある空間にワクワクする方が自然だ。ミニバンの3列目座席に効率よく収まってみたいという欲求もなくはないが、狭くても視界は開けていてほしい。
重量低減、冷房効果の点でガラスエリアを小さくした方がいいとか、大きなガラスは衝突安全の点で不利ということがあるかもしれない。自動運転が進めば外を見る必要がないからウィンドウは極小でいいということもあるだろう。でもパノラマカーが、エコや安全、先端技術の方向性に反しているとは思いたくない。
2018-07
ムルティプラにやや遅れて登場したホンダ・エディックス。同じ3x2の6人乗り。
家族構成が3人、5人、6人の場合にはこの6人乗りが選択肢になる。4人の場合のみ選びにくい。3人が前列に座ると一人だけ後でさみしいし、かといって前後に二人ずつなら3x2の必然はない。必然はないが気分によって好きなところに座ることができる。結局のところ、何人家族でも普通のミニバンとは違った距離関係に配置されるという楽しみ方がある。
エディックスの全長はムルティプラより300 mmほど長く、幅は80 mm狭く、60 mmほど低い。
排気量は1.7~2.4 Lで、ムルティプラ(1.6 L)より大きい。
エディックスは2004年7月発売だから、当時の新車紹介記事ではムル前期型(2003年4月発売)が必ず引き合いに出されていた。
エディックスの記事で知ってムルティプラに食指が動いたケースがあったかどうか。仮にムルティプラがそこで引っ掛ったとしても、イタリア車ということで土俵に乗らず、奇抜なスタイルは世間体の点で疎んじられ、MTしかないことから選択肢から脱落していったことは想像に難くない。
上記の時点では旧顔の新車は手に入らず、新顔(2004年11月発売)しか選択肢がなかったかもしれない。旧顔は多人数乗りのミニバンが必要でない向きにも選ばれたかもしれないが、新顔はそれが必要で選ばれたと推測できる。ただしこれを「いいクルマ」として認めて購入に至った堅実派がいたかどうかといえば疑問だ。新顔であったとしても数々の条件をクリアしなければならない。やっぱり”多人数乗りのミニバン”以外の要素を求めた結果なのである。
「面白くなければクルマではない」、「いいクルマには興味のない」という類の人間のクルマ選択指標を「逸脱度」で測るとすれば、
ムルティプラの逸脱度は3点以上。
前席横3人掛け(取り外し可能な後席)、変なダッシュボード
他にない外観(大きなグリーンハウス、短い全長にでかい全幅、生き別れハイビーム、2段グリル....)
デュアルサンルーフ
そして希少種であること。
エディックスは前席横3人掛けの1点。仮に旧フィットのようなパノラマルーフの設定があれば2点か。
前席横3人掛けだけでも1.5点あげてもいいかもしれない。今やこれに代わる新型ミニバンがないのである。
シートのバリエーションとして3x2+2とか、前席中央が後列までスライドできるとか。さらには前後スタッガード配列だけでなく上下に高低差を付けた段差配列とか、横2座にも3座にも自在に形状変化するシートとか。
エディクスも一代限りで後が続かなかったが、継続してアップデートしていれば、3x2がミニバンのひとつのカタチとして残ったかもしれない。
並んだらとりあえず比較。
寸法比較(全長×幅×高 mm)
4885×1915×1355 マセラティ グラントゥーリズモ
4230×1680×1295 エクサ
前席の居住空間は同じくらいに見えるが、車幅は23 cm違う。
コークボトル型のグラントゥーリズモに対し、抑揚のよの字もないエクサ。
寝ているエクサとの対比でさらに際立ってはいるが、グラントゥーリズモのイカツい顔はやり過ぎた。
フロントやテールエンドに表情を連想させるデザインを施すのはCOOLとは言いにくい。
フロントフェイスにはライトとラジエータグリルが目と口の位置関係に配置され、顔に見える場合もある。でもスポーツカーなら特に、機械構造物としての機能美が表現されるべきところなのに、つり目でにらみを利かせたようなヘッドライトで精悍に見えるだろうというのは安直すぎる。デザイナーはそう見えないように気を使い、工夫をするべきである。クールでなくてよい園児バスには顔が付いている。
それにしても、ナンバープレートの装着を前提としていなかったようなフロントデザイン。横にずれてついているよりは潔いが。
新緑がまぶしい5月の行楽地。
一人の警官が、周辺の人だかりも含めてパトカーを写真に収めている。想像を膨らませばいろんな解釈があり得るだろう。それほど違和感はない。
この写真はさておき、一般に、クルマを写真に収めている姿というのは、傍から見ると滑稽なものだ。撮る側としても、自分のクルマに入れ込んでいる姿はあまり見られたくないだろう。
ところがバイク乗りにはそういう感覚があまり無いようなのだ。傍から見られても気にならない。ツーリング中には当たり前に他人どうしでも写真を撮ってあげたりできるのだと。
そう言われてみれば確かにそれほど違和感はない。
なぜか?
①:大きさの違い: バイク < クルマ
バイクは人間と同じ大きさだから、被写体までの距離をそれほど取らなくていい。バイクをフレーム内に収めるのに苦労しない。構図を変える場合、バイクそのものを移動してもよい。よってもってさりげなく撮れる。カップルが相手の写真を撮るのと同じ感覚だ。違和感はない。二人(人とバイク)で写るときも他人に撮影を頼みやすい。
②:入れ込みの度合:バイク < クルマ
実際にはバイクも本人の入れ込み度合は同じなのだが、一般にはそういう認識は薄いので、景色を撮っていてバイクはたまたまフレームに入っている、と思われやすい。
クルマの場合は、その外観が特徴的であればなおさら、景色よりも主体はクルマだと傍からも一見して解る。
③:現地到達の達成感:バイク > クルマ
単独ツーリングでの遠出。クルマと違ってバイクは炎天・雨風にさらされての移動だ。 目的地に着けば達成感も大きい。そこで愛車とともに写真を撮るのにためらいの入る余地はない。
というわけで、クルマは大きくて、かさばって、目立つうえ、周囲からの温かい目も期待できず、写真が撮りにくいのだった。
記憶に残るショーカーの一つにMazda MX-81 Aria(1981年)がある。
残念ながらネット上には限られた写真しかない。
http://www.allcarindex.com/search.html?f=1&nm=MX-81
サイドのガラスエリアとロワボディの関係は、見慣れたクルマのそれとは比率が異なる。ヘッドライトはリトラクタブルタイプ。面構成、タイヤとボディのバランスが何ともささる。物体としての質感が視覚に訴えかけてくる。
大きなサイドガラスがもたらす空間は、周りが、もしくは周りから見えすぎて落ち着かないとか、細いピラーは現代の衝突安全基準を満たさないとかあるかもしれない。でもこれが電気自動車で音もなく近づいて来たら? ロングルーフのスポーツワゴンにしたら?と考えるとワクワクする。
登場は今から約36年も前である。
デザインの出所が同じBXは1982年リリースであるから同時期ではあるが、ショーカーのMX-81のほうが新しさがあるし、スタイリッシュである。ショーカーで終わってしまったのがもったいない。
当時ピアッツァのように、美しく斬新なスペシャリティカーが市販化されたケースもあった。
常に新しいカタチを世に問うのはメーカーの使命だ。しかし、ハッチバックのボディをここまで美しく仕上げようとしてきただろうか。キャラクターラインや面構成をこねくり回すのはほどほどにして、クリーンなスタイルで新しさを提案してほしい。
http://cardesignnews.com/articles/concept-car-of-the-week/2016/02/mazda-mx-81-aria
ついでに言えば、Genesis(1988)もかなりささる。
http://www.allcarindex.com/auto-car-model/Italy-Bertone-Genesis/
自分のクルマが走っている様子を眺めることは普通はない。
これ、クルマ好きの最大のジレンマではないだろうか。
運転していれば、世の中にあふれている軽自動車やハイブリッドカーが前を走り横を通り過ぎていくのを眺めている時間のほうが圧倒的に長いという矛盾。かと言って、自分と同型のクルマが走っているのを見たいというわけでもない。
自分のクルマの走行シーンを見たければ、録画に頼ることになるが、誰かに撮ってもらうか、誰かに運転してもらって自分が撮るしかない。
一人でやるなら、三脚に撮影機材を固定してその前を車で行き来すれば、一応は撮れる。
しかし、以下の理由から1度やれば懲りるだろう。
話が山奥前提になってきた...。
ドローンがこの問題を解決してくれるだろうか。自動追尾撮影も可能だが、公道上では制約が多すぎる。
自撮りがだめなら、映った姿で我慢。
市街地ならショーウィンドウに映った姿を見ることができる。 が、走行中はわき見運転はになってしまう。
最後の手段は、ワゴンRのバックドアに映った姿を見ることだ。
凹凸がなくプレーンな面が確保されているワゴンRのバックドア。4代目は後続車投影性能が高い。
黒のボディカラーでコーティングがかかっていればポイントは倍。後ろに付けたらラッキー。