profile: 2010年8月~2012年4月
659cc 4AT 4WD
全長x幅x高 3395x1475x1600mm
ホイールベース 2550mm
重量 960kg
「アイ対エクサ」という構図は普通ではあり得ないが、ここではエクサ1→アイ→エクサ2という流れである。
エクサに挟まれアイは戦わざるを得ないのであった。
というわけで、異端の軽と、80年代の後半に現れ、ちょっとだけ爪痕を残したクルマを比較してみよう。
スタイル:
甲乙付け難い。両車のスタイルにはそれぞれ見所がある。
安全性・利便性:
アイは、ABS、エアバック、キーレスエントリー・キーレスエンジンスタートなど、安全・便利機能付きであって、エクサはこれら機能をすべて持たない。
現在エクサ2はエアコン機能も喪失。さらに吹き出すのは、レバーを「冷」にしても最強温風のみ。
アイは、セーフティ機能付きパワーウィンドウ、ドアミラー展開忘れ自動復帰、車速感応フロントワイパー、リモコンによるパワーウィンドウ操作、UV&ヒートプロテクトガラス、シートヒーターなども装備。
便利機能に関しては当然だがアイの圧勝。
経済性:
平均燃費は、アイ:12.3km/l、エクサ(4AT):9km/l
アイの燃費は期待したほどの値ではなかった。
4WD+ターボであったため、ちょっと元気に走ると一気に低下した。
それでも平均的に3割以上は良い。
軽自動車であるから維持費も安い。
初年度登録から29年が経過しようとしているエクサは自動車税、重量税とも割増だ。
ドライバビリティ:
加速、登坂力ではアイ(ターボ付)に軍配が上がる。
高速巡行ではアイはやや心もとない。
エクサはびしっと直進するが、100km/hを少し超えるとキンコン・カンコンと警告音が鳴り出す。
ワインディングロードは両車とも楽しい。
ただし、アイはきゃしゃな前輪の摩耗が気になって積極的にはなれない。
雪道でのアイは、滑らないリアと滑るフロントという印象。
4WDではあるがオンデマンド方式であることに加え、特に上り坂ではフロントに荷重がかからず、思ったように曲がっていかない感じ。一般人にはFFベースの四駆がベターだろう。
エクサは、FFではあるがLSD付きのため、雪道もそこそこ走る。
乗り心地:
アイはリアの足回り構造と高重心のせいで、ゆすられ感が強い。
一見モダンなシートもやや硬めで、残念ながら落ち着きが悪い。
結果、カーステのボタンを押そうにも指先が振られて定まらない。
ステアリングはチルトすらしないので、シート側で調整しても、
いつもどこかがあともう少しという感じなのである。
しかし調整機構よりもシート自体の出来を向上させる方が先決。
エクサは開口部の大きい構造だから「ガタピシ」はするものの乗り味はフラット。
シートは、意匠性、掛け心地ともによくできている。
エクサは、Tバールーフと、リアハッチ脱着という飛び道具を持つ。
日射直撃度、室内灼熱度、周辺臭気感知度ではエクサの勝ち。
さて、結局、アイとエクサはどっちが勝ったのか。
ここでは「普通からの逸脱度」で総括したい。
ここでいう「普通」とは、世の中にあふれているタイプのクルマ、もしくは「日常」。
「逸脱度」は、わくわくするクルマに乗り続けるための指標である。
逸脱度=刺激度(わくわく度)=愛着度=乗り続ける、という流れである。
経済性、快適性、安全性は愛着度にはそれほど結びつかないので、ここでは重視しない。
逸脱度=刺激度の部分は、クルマに何を求めるかによる。
世の中で言われる「いいクルマ」に興味のない人間にとっては、逸脱=ちょっと変、である。
快感度=刺激度という式もあるもしれない。
周りから見られる快感、ルーフを開け風を受けて走る快感...。
でもそれも、他と違うクルマであったり、非日常感がもたらす「逸脱」から生じるものとも言える。
速度・加速による快感度などは慣れによって減少していくから、さらに上を求めることになる。
愛着度=乗り続ける、にはつながらない。
さて、アイは、
特異なエンジンレイアウトによる居住空間とドライバビリティ=1
魅力的な外観デザイン=1
計2点
エクサは、
他にはない外観デザイン(特にキャノピー)=1
Tバールーフ、脱着ハッチのおもしろ度=1
希少度=1
計3点(クーペは2.5点)
ということで、おおざっぱな比較ではあるが、エクサの勝ちということになった。
クルマを選ぶときには、「逸脱度」で見て3点あればひとまずは長く付き合えると言えそうだ。
ただし現在のクルマも逸脱度3点以上の場合、手放したら後悔することになる。
リアエンジンのおかげで、フロントまわりはデザイン上の制約が少ない。
エアの取り入れ用に大きなグリルを設けなくていいからスマートな顔つきにできる。
めいっぱいフロントに寄せられたホイルアーチによって、リスが頬っぺたを膨らましているような顔になった。
ちなみに欲張り過ぎてほお袋にいろいろと詰め込み過ぎると不細工になるので要注意である。
フロントウィンドウ下端とヘッドライトがこれほど近いクルマは市販車では思いつかない。
(ムルティプラの生き別れハイビームは別として)
プロジェクタータイプを奢った目つきは、愛らしくもあり精悍でもある。
Aピラーからのルーフラインはスムーズで伸びやか。
Aピラーの付け根にはヘッドライト、ホイールアーチ、フロントウィンドウ下端樹脂グリル、三角窓の要素が密集。この圧縮されたフロント部にコンパクトコミューターの未来感が漂う。
コンパクトカーなのにフロント部分を長く見せようと腐心しているクルマもあるが、長く見せることに何の意味があるのかと思ってしまう。
アイ自身も、前下がりのベルトラインや、傾斜したフロントウィンドウなどはカッコ重視。
さらに未来のコミューターを目指すなら、居住空間と荷室は目いっぱいに確保し、エンジンや補器類は最小スペースに凝縮することになる。
ロゴバッチにも表現されているそら豆型のデザインモチーフのように、どっちがフロントかリアかわからないくらいのシルエットになっていくべきだろう。
ついでに言えば、前輪と後輪は同サイズにしてほしい。
どこにもないカタチのフロントエンド